カレッジのフローリストコースでは、授業の一環として、2週間のワーク・エクスペリエンスを行わなくてはなりません。
ワーク・エクスペリエンスとは実習体験で、給与はもちろん交通費も支給されるわけではなく、あくまでも実際のフローリストのお手伝で実務を経験し、2週間行ったことを証明するレターを店の方からいただき、学校へ提出します。
当時住んでいたロンドン近郊のBroxbourne(ブロックスボーン)にある小さな花屋さんでのワーク・エクスペリエンス考えていた私ですが、カレッジの先生だったローラのアドバイスで「単位をとるだけならそれでも構わないが、素晴らしい体験を望むならロンドン中心部の有名な花屋さんを探すべきだ」と言われ、そうすることに決めました。
イギリスの花関係に知り合いも全くいないうえ、ローラが紹介してくれたわけではないですが・・・
私は、断られるのを覚悟で、メイフェアーにある最高級ホテルClaridg's(クラリッジ)の装花部門にワーク・エクスペリエンスをお願いするメールを送りました。
幸運にも、お返事をいただき、採用して下さったのがマネージャーだったYvonneです。
これが最初の出会いとなりました。
初めて出勤した日は、クラリッジの伝統と格式、高級感に圧倒され、短期間のワーク・エクスペリエンスなのに契約まで交わし、制服まで貸与されたことには大変戸惑を覚えました。
ショップには今までに見たこともない色のお花や珍しい高価なお花がたくさんありました。
スタッフは皆個性豊かで素晴らしいセンスを持った方達です。
そしてその中心となり、全てを指揮していたのがYvonneでした。
もちろんワーク・エクスペリエンスの身分である私は、掃除やコンディションの手伝いなど下働きが中心でしたが、わくわくするようなその体験に、何一つ辛さは感じませんでした。
それどころか、すばらしいお花の中でプロフェッショナルのフローリースト達と仕事をできることに、幸せさえ感じました。
Yvonneは「about」の中の紹介でも書きましたが、日々限られた予算・花材・時間の中で、最高のパフォーマンスを要求される立場であり、素晴らしいテクニックと、高いプロフェッショナルとしての意識を備えていました。
彼女の傍らで仕事をするだけで学べるものが多いと確信した私は、気が付くとワークエクスペリエンスはその後1年ほど続いていました。
そして、ついにはフリーランスのプロフェッショナルとして、Yvonneのチームに入ることができたのです。
Claridge's(クラリッジ)で、素敵なお花に触れながら、Yvonneのもと素晴らしい仲間たちとお仕事が出来きたことは、まるで夢のようでした。
英国での一番大切な思い出となりました。
Yvonneとの出会い、そしてクラリッジで過ごした日々全てが、私にとって花の仕事をする上での原点となっています。